温かいこの場所で、君と
「やっぱり、私はいらないの？」

小さく夏羽は呟き、静かに泣き始める。泣くたびに過呼吸を起こし、それを誰にも知られないように布団に潜り込んだ。

いつの間にか、泣き疲れて眠ってしまっていたらしい。夏羽が目を開けると、夕方になっていた。

窓の外には世界をオレンジに染める夕日。財布を夏羽が無くさなければ、今頃はあの夕日を見ながら仲良くミゲルと帰っていたのだろう。苛立ちが込み上げてきて、夏羽は少し乱暴にカーテンを閉める。

そして、また布団の上に横になった時、コンコンコンと小さくドアがノックされた。

「Opo（はい）」

「俺だよ」

すぐにミゲルが部屋に入ってくる。夏羽は気まずさを感じながら体を起こした。

「今日は、デートを台無しにして本当にごめんなさい」

ミゲルから目をそらし、うつむきながら夏羽は言う。謝ることは慣れている。両親にいつも謝っていたからだ。

「ねえ、海岸を散歩しない？」

そう言い、ミゲルは夏羽の手を掴んで立たせた。
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