温かいこの場所で、君と
夕焼けが照らす海岸は、朝の景色とは世界が全く違う。夕方この海岸を散歩したことはなく、夏羽は夕焼けを見つめながらミゲルと歩いていた。
幼い頃、夏羽はある本を読んだことがある。逢魔時に外に出歩くと妖怪に魂を攫われてしまうというものだ。
いっそ、攫ってほしいと夏羽は思った。日本にいても、フィリピンにいても、迷惑しかかけていない。こんな自分など生きる価値はない。夏羽は痛む胸を押さえる。
「夏羽、昼間は怒鳴ってごめんね」
ミゲルが立ち止まり、言う。夏羽が振り向くと、申し訳なさそうなミゲルがいた。
「どうしてミゲルが謝るの?」
悪いのは私なのに、そう夏羽が言うとミゲルは悲しげな顔をする。
「ずっと、不安に思ってたんだ。夏羽が生みの親の言葉を信じて、自分から命を絶ってしまうんじゃないかって……。だって俺は、夏羽を必要としているから。だから、怖かったんだ」
ミゲルの言葉が、スッと夏羽の胸に入る。その刹那、胸が夏のように暑くなっていく。でもその熱が心地よい。
幼い頃、夏羽はある本を読んだことがある。逢魔時に外に出歩くと妖怪に魂を攫われてしまうというものだ。
いっそ、攫ってほしいと夏羽は思った。日本にいても、フィリピンにいても、迷惑しかかけていない。こんな自分など生きる価値はない。夏羽は痛む胸を押さえる。
「夏羽、昼間は怒鳴ってごめんね」
ミゲルが立ち止まり、言う。夏羽が振り向くと、申し訳なさそうなミゲルがいた。
「どうしてミゲルが謝るの?」
悪いのは私なのに、そう夏羽が言うとミゲルは悲しげな顔をする。
「ずっと、不安に思ってたんだ。夏羽が生みの親の言葉を信じて、自分から命を絶ってしまうんじゃないかって……。だって俺は、夏羽を必要としているから。だから、怖かったんだ」
ミゲルの言葉が、スッと夏羽の胸に入る。その刹那、胸が夏のように暑くなっていく。でもその熱が心地よい。