執着求愛~一途な御曹司の滴る独占欲~
「言い寄られてたわけじゃないけど。でも、ありがとう」
職場であんな話をされて困っていたのは確かだ。
私が苦笑しながらお礼を言うと、大山さんは「いえいえ! 広瀬さんが困っているときはいつでもお助けしますから!」と胸をはった。
彼女の優しさに感謝しながら雅文のことを考える。
雅文に食事に誘われたけれど、きっとこのままふたりで会えば私はまた流される。
もう傷つきたくない。裏切られたくない。
そう思っているのに、きっと雅文の誘惑には勝てない。
同じ間違いを繰り返さないように、ちゃんと距離をおかないと。
そう決心した私は終業時間がすぎると同時にスマホを取り出した。
【すみませんが、急用が入ったので帰ります】
素っ気ないほど簡潔なメッセージを送り、猛然と帰る支度をはじめた。