執着求愛~一途な御曹司の滴る独占欲~

「おー、瀧内。じゃなくて、今はもう瀧内部長か」

 そう言いなおされ、「瀧内でいいですよ」と肩を上げて笑う。彼は入社当時からお世話になった上司だ。

「来週末は暇か?」
「来週末、ですか?」
「せっかく本社に戻って来たんだから、営業統括部で歓迎会しよう。アメリカでの話を聞かせてくれよ」
「ありがとうございます。こっちの様子も色々聞きたかったのでうれしいです」
「じゃあ、大山さん。急で悪いけど歓迎会の段取り頼んでもいいか?」

 課長に頼まれた大山さんは、「まかせてください」と胸を張る。そして俺に向けて意味ありげに笑った。

「広瀬さんも歓迎会に参加するように、しっかり誘っておきますね」

 ビシッと親指をたてながらそう耳打ちされ、俺は苦笑いして「ありがとう」とお礼を言う。
 彼女はずっと前から俺がまどかに惚れていることに気付いていて、まどかには内緒で色々協力してくれていた。

「それから、さっきマーケティング部の人が来て、広瀬さんに言い寄ってましたよ」
「マーケティング部?」
「田端さん、って名前だったかな。広瀬さんが困ってそうだったんで、電話だって嘘をついて追い払っておきました」
「そっか。ありがとう」

 ……田端か。
 同期で専務の息子でもある彼の顔を思い浮かべ、俺は眉をひそめた。




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