執着求愛~一途な御曹司の滴る独占欲~

「瀧内くん、ありがとう」

 横に並んでお礼を言うと、ちらりと睨まれる。

「世話焼きでお人好しなのもいいけど、あんまり無理するなよ」

 雅文の忠告に私は思わず苦笑する。
 口では大丈夫と言いつつ、本当はかなり重くてつらかったのが、バレバレだったらしい。

「さっき話してるのが聞こえたけど、双子の弟と十歳も離れてるんだな」
「あ、そうなの。弟たちが生まれた直後に両親が離婚しちゃったから、バリバリ働いていた母を手伝って私が育てたようなもんなんだよ」
「えらいな」

 優しい笑顔をむけられて、慌てて首を横に振る。

「別にえらくないよ。母が女手ひとつで家庭を支えてくれていたんだから、家のことを手伝うのは当たり前でしょ」

 実の父は双子の弟が生まれた直後に家を出ていき、それから母は必死で私たちを育ててくれた。
 突然父を失った寂しさを埋めるようにたえず笑顔で頑張ってくれた母を思えば、家事や育児を手伝い家庭を支えるのは当たり前のことだった。

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