執着求愛~一途な御曹司の滴る独占欲~
『雅文、別れよう』
意味が理解できなくて、頭が真っ白になった。彼女に渡そうと準備していた指輪を出すこともできず、ただ息をのむ。
『雅文は社長の孫なんだよね? アメリカ赴任ももう決まっているんでしょ?』
『どうして……』
『人伝に聞いたの。雅文は会社の人たちをずっとだましてきたんだね』
まどかの淡々とした言葉を聞きながら、今まで打ち明けずに先延ばしにしてきた自分を恨んだ。
誰かの口から聞くよりも、自分できちんと説明したかった。そう後悔してももう遅い。
『本当にごめん。祖父から特別扱いされないように、社長の孫だってことは伏せて働くように言われていたんだ。まどかには打ち明けようと思ったんだけど……』
『謝らなくてもいいよ。雅文がアメリカに行けばもうしばらく会えなくなるし、ちょうどいい機会だから、これで私たちの関係も終わりにしよう』
『ちょうどいいって』
あんなに幸せだったのに。愛し合っていたのに。俺が御曹司だと知ったとたん態度をがらりと変えたまどかに戸惑う。
『もう、雅文のこと好きじゃないの』
目も合わせずに言われ、目の前が真っ暗になった気がした。
もし俺が御曹司じゃなかったら、まどかはこんなふうに離れていかなかったんだろうか。もしもっと早く自分の口から真実を話していればわかりあえたんだろうか。
まどかと別れてからも、アメリカに行ってからも、俺はずっと彼女のことが忘れられずにいた。