執着求愛~一途な御曹司の滴る独占欲~
お酌をうける雅文は、普段と変わらず人当たりのいいおだやかな笑顔を浮かべていた。
あんなにたくさんの可愛くて若い女の子に囲まれたら、きっとうれいしいよね。なんて考えて、胸の奥がもやもやしてくる。
「広瀬さん! なにさっきからこんな隅っこでしょんぼりしているんですか! 瀧内部長とは同期なんだから、堂々と隣に行って話してくればいいじゃないですか!」
すっかり出来上がっている大山さんに急に矛先をこちらにむけられ、驚いて瞬きをする。
「いや、しょんぼりしてないよ」
「大丈夫! 私たちはあんなミーハーな女どもより、断然広瀬派ですから!」
「なにが大丈夫なのか、さっぱり。それよりもお酒ばっかり飲んでないで、なにか食べた方がいいよ」
ハイペースで飲む様子に心配になって、テーブルの上にあったおつまみを彼女たちの前に移動させる。
ついでに空になったグラスやお皿をまとめていると、「さすが広瀬さん! ほんとオカン!」となぜか拍手をされてしまった。
「広瀬さんを見ていると実家のお母さん思い出します」
「いやいやいや、それうれしくない」
そんな会話をしていると、頭上で「ははっ」と噴き出すような笑い声がした。
みんなで一斉に上を向くと、そこにグラスを持った雅文が立っていた。