執着求愛~一途な御曹司の滴る独占欲~
まったく思い当たらなくて目をまたたかせると、内藤店長は大きな肩をあげてにやりと笑った。
「いろいろ頼まれて正直俺は迷惑なんだけどな。まぁ昔からあいつが振り回されるのを見て楽しませてもらってたから、しょうがないか」
「なんのことですか?」
首を傾げてたずねたのに「なんでもない」と店長にはぐらかされ、私は顔をしかめる。
「それに、私も広瀬さんを信じてますよ」
背後から声を掛けられ振り向くと、青山さんが立っていた。
黒縁眼鏡に黒い髪をうしろでひとつにまとめた彼女は、今ではこの店舗にはかかせないベテランのスタッフになっていた。
「私がここのバイトになったばかりのころ、広瀬さん言ってくれましたよね。不器用であがり症で欠点だらけだった私に、几帳面でまじめなところはだれにも負けない長所だって。あれ、すごくうれしかった」
五年前の出来事を今でもしっかりと覚えてくれている青山さんに、懐かしい気持ちになりながらうなずいた。
「あのときの広瀬さんの言葉がなかったら、私はここのバイトをやめていたし、人生が変わっていたんですよ。広瀬さんは私の恩人だから、なにがあっても味方です」
そう力強く言われ、「人生っておおげさだよ」と照れ笑いをする。そして青山さんを見て、あることに気が付いた。