執着求愛~一途な御曹司の滴る独占欲~
閉店間際のひと気のない店舗に入ってきた男の人。その姿を見て肩がこわばる。
「……お前、やっぱりむかつくな」
私を見てそう吐き捨てたのは、不機嫌な顔をした田端くんだった。
むかつくって……。
あからさまな悪意を向けられ戸惑っていると、「もう閉店時間なんですが、どうかされましたか?」と異変に気付いた店長が私たちの間に割って入った。
「お前は関係ないから、ひっこんでろ。広瀬に話があるだけだ」
田端くんに乱暴に言われ、店長の肩に力が入ったのがわかった。
私はあわてて「会社の同僚なので大丈夫です」と険しい顔の店長に説明する。
「これから閉店作業をして着替えるから、従業員出口で少し待っていてくれる?」
私がそう言うと、田端くんはうなずいて歩いて行く。
その後ろ姿を見送りながら私はため息をついた。
一体なんの話だろう。田端くんの態度からも今のこの状況からも、明るい要件ではないのは確かだ。