執着求愛~一途な御曹司の滴る独占欲~
 

 ホテルの番号を検索し電話で事情を話して謝ると、『クラブフロアの客室のスリッパは、お持ち帰り可能なアメニティですのでお気になさらないでください』と丁寧な返答が来た。

 それどころか『わざわざご連絡くださってありがとうございます』とお礼を言われ、ほっとしながらもさすが高級ホテルだなと感心する。

 電話対応までものすごく親切で温かい。
 こういう心のこもった接客はカフェの店舗のスタッフの参考になるかも……。

 なんて無意識に仕事に結びつけて考えている自分に気付いて苦笑いする。

「あ、そういえば客室にパンプスを忘れてしまったと思うんですが」

 思い出してそう付け加えると、『客室にお忘れ物はございませんでした』と言われ首をかしげた。

『みつけましたらご連絡いたします』
「あ、すみませんがよろしくお願いします」

 電話を切ってから、確かに部屋にパンプスを置いていったのにと不思議に思う。


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