執着求愛~一途な御曹司の滴る独占欲~
その瞬間、心臓がきゅっと跳びはねた。鼓動が速くなり体が熱くなる。
彼が言った『好き』は決して恋愛感情ではなく、仲間としての好意だってわかっているのに、どうしてこんなにドキドキしてしまうんだろう。
もしかして私、彼のことが好きなのかな……。
戸惑いながら雅文を見る。
いつ見ても悔しいくらいかっこいい凛としたその横顔。恋愛経験ゼロで色気のない私が、こんなにかっこいい人を好きになったって相手にされるわけがない。
そんなことはわかっているけれど、ドキドキとうるさい心臓はなかなか静まらずに途方にくれる。
眉をさげ困り顔になった私を見た雅文が「どうした?」と首をかしげた。
「ううん。なんでもない」
慌てて首を横に振ると、雅文は柔らかく微笑み「頼りにしてるぞ」と私の肩を軽く叩いた。そして前を向いて歩き出す。
私もそのあとを慌てて追いかける。
信頼できる同僚の雅文に認めてもらえたことが、体の奥がむずむずするくらい嬉しかった。
そんな私たちのやりとりを内藤店長は「あー! もうほんとじれったい!」とクマのように大きな体を揺らしながら見ていた。
そうやって一緒に仕事をしていくうちに、いつの間にか私の心には雅文への好意が芽生えゆっくりと育ち始めていた――。