5時からはじまる甘い罠。




皮肉だな、と思った。


自分の気持ちと反対のことを口にすると、それが嘘だって自分でこんなにわかるんだ。


初めて知った。


ドラえもんを握っても、ぜんぜん消えないほどの、強い胸の痛みも……。



「ふうん…ならいいけど」



「無闇に近づかないようにね」



解放された私は、教室に入ってため息をつく。


朝から、すごく、疲れた……。


脱力して席に着くと、前の席の子ーー里奈ちゃんが、わたしを振り返った。



「わらし。

あんた、なにやったの?

変なのに絡まれてたじゃん」



突然話しかけられたことと、


その声色が心配そうだったことに、わたしはびっくりした。


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