5時からはじまる甘い罠。
「……栞菜」
廊下で人と立ち話をしていた最中、
声をかけてきた人。
わたしは驚いて振り向く。
……やっぱり、廉くんで。
彼を見るだけで、胸が痛くなるなんて。
こんなことになるなんて、想像もしなかった。
「じゃ、よろしく」
「……あ、はい」
喋っていた男子は廉くんの姿を見て、その場を立ち去る。
わたしは彼にぺこりと頭を下げた。
廉くんは彼の後ろ姿をじっと見た。
「……今の誰?」