5時からはじまる甘い罠。



「わ」



彼が驚くわたしの手をとって、体ごと、彼の胸に抱き込まれる。


心なしか、廉くんの手のひらは熱い。



「聞こえる?」



廉くんの胸に、耳を傾けて、驚く。


心臓の音、すごい。






「俺は、はじめから気になってた、あんたのこと。

初めて見かけたあの日、

……なんだか消えそうに見えて、繋ぎ止めたくなって」



……わたしに奇跡が降った日だ。




優しくて穏やかな声。


廉くんの香りに包まれて、目を閉じる。



「ごめん。

多分はじめから、特訓なんて、俺にとっては関係なかったよ。

……ただ、もっと知りたくて、誘った。

栞菜といるのが、楽しかったから」




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