5時からはじまる甘い罠。
なんの変哲も無い俺の部屋に、栞菜がいるだけで、全部暖かい色に染まって見えるなんて言ったら、
世の中の奴にベタ惚れすぎだと笑われるだろう。
俺は自分の椅子に座ると、栞菜にクッションを差し出した。
「適当に座ってよ」
栞菜は神妙に頷いて、床にクッションを引くと、その上に座った。
椅子に座る俺とはかなり距離をとった場所で、視線はどこか虚空をさまよっている。
どうやらひどく緊張しているようだった。
ふっ、と思わず笑うと、栞菜はピクリとして俺を見た。
いつまでも、新鮮な反応を見せる俺の彼女だ。
「なんか飲む?」
尋ねると、栞菜はふるふる、と首を振った。
そう、とうなずいて、
俺は机に頬杖をついて尋ねた。
「それで、今日は俺は、姫に何をして差し上げればいいですか」