5時からはじまる甘い罠。



からかうように言うと、栞菜は困ったように俺を見る。



「あんなに俺の部屋に来たがったんだし。

何かやりたいことがあったんじゃないの?」



「……え」



栞菜は戸惑いを隠さずに、えっと、と口ごもった。


視線が面白いくらいに泳ぐ。


その様子をわざと、黙って見つめてやった。


余計にあせらせるとわかっていて。


……そのくらいの意趣返しは、許されるだろ?


なにせ俺はあんたに振り回されっぱなしなのだから。


しばらく考えた彼女がようやく口を開く。


何を言いだすかと思ったら、



「……べ、勉強!」



と拳を握りしめた。
< 152 / 171 >

この作品をシェア

pagetop