5時からはじまる甘い罠。
からかうように言うと、栞菜は困ったように俺を見る。
「あんなに俺の部屋に来たがったんだし。
何かやりたいことがあったんじゃないの?」
「……え」
栞菜は戸惑いを隠さずに、えっと、と口ごもった。
視線が面白いくらいに泳ぐ。
その様子をわざと、黙って見つめてやった。
余計にあせらせるとわかっていて。
……そのくらいの意趣返しは、許されるだろ?
なにせ俺はあんたに振り回されっぱなしなのだから。
しばらく考えた彼女がようやく口を開く。
何を言いだすかと思ったら、
「……べ、勉強!」
と拳を握りしめた。