5時からはじまる甘い罠。



……ああ、やめてくれ。


そういう顔を見ていると、なんだか妙な気分になってくる。


なにしろ今は、密室に彼女とふたりきりだ。


むくり、と鎌首をもたげ始めたやっかいな心を、無理矢理押し殺すように、俺は言った。



「……そろそろ、外に出る?

こないだうまい店、友達から教えてもらったんだけど」



お腹はあまり空いていなかったけど、俺はそう尋ねる。


このまま二人でここにいることに、危機感を感じたから。


だけど彼女は俺の予想に反して、その提案に首を振った。



「……えっと、もう少しここにいない?」



「……え?」

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