5時からはじまる甘い罠。
第3話
「栞菜」
登校途中の道で、偶然声をかけられる。
誰だかすぐにわかって、わたしは慌てて振り向く。
「おはよ」
ーーわたしをわらしとよばないのは、廉くんだけだ。
「おはよう……」
挨拶を返すと、廉くんはあくびをした。
少し眠そうだけど、朝も相変わらず綺麗な彼。
なんか最近寒くない?と手のひらを擦り合わせるようすを、緊張しながら横目で盗み見た。
放課後に街に繰り出すことには、特訓のおかげで少しは慣れてきた。
だけど、誰かと一緒に登校するのに慣れていないからか、今はすごくぎこちない。