5時からはじまる甘い罠。



「…三原先生、およびですか?」



保健室の三原先生は、声をかけるといつもの穏やかな笑みを見せた。



「橘さん。

急に呼んでごめんなさいね。

楽しんでる時に」



わたしが首を振ると、先生は申し訳なさそうに言った。



「実は大怪我した人が出ちゃって、これから付き添いで病院に行かなきゃいけないの。

その間、保健室に誰もいなくなるでしょ。

もし誰か怪我した時のために、橘さん、いてくれない?」



わたしはうなずいた。


保健委員として当然だ。



「ごめんね、友達の試合、みたいよね」



最後まで謝り続けた三原先生に、わたしは、友達、いません……、とは言えずに苦笑いをかえした。



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