5時からはじまる甘い罠。
「へいきだよ。
別に、大したことない」
そう言って、傷のそばでしゃがみこむわたしの頭を優しく撫でてくれる。
廉くん……。
こんな時まで、気を遣わなくてもいいのに。
「……手当、させてください……」
わたしが半分泣きそうに懇願すると、廉くんは、優しい瞳になった。
「うん、ありがとう」
わたしは何度も首を振った。
・
「……っ」
「いたい……?」
消毒液の刺激に廉くんは眉をひそめたけど、大丈夫、とこたえた。
「それより、栞菜の手、冷たくて気持ちいい」
そんな言葉にどきりとする。
「あー、ずっと触ってて欲しい」
何言ってるんだ……廉くんは。
わたしは顔を赤らめて、手当を続けた。
「包帯を倉庫から取ってくるので、待っててください」
わたしがいうと、廉くんは素直に頷いた。
保健室を出る時、そっと振り返って見た廉くんは、やはり辛そうに目をひそめていた。