5時からはじまる甘い罠。
「ばか」
耳元で囁かれて、急に視界が暗くなった。
何も見えなくて、一瞬焦るけど。その声だけで誰が来てくれたのか、わかってしまう。
「廉くん……」
わたしの両目を片方の手のひらで塞ぐ廉くんは、もう片腕でわたしの体をぎゅっと抱きしめて、
「……おまえ、何やってんの。
怖がりのくせに、大声出して……」
「……っ」
保健室まで聞こえた、と呆れたような廉くんの声は、優しかった。
だって……。
廉くんが悪く言われるのが、耐えられなかった。
自分のことより、ずっと。