5時からはじまる甘い罠。



耐えていたのに、やっぱり涙がこぼれてしまう。


それは、手のひらから廉くんにも伝わってしまったようで。


廉くんはキレた。



「……俺のことは、どう言ってくれてもいいんですけど。

こいつに向けていったことだけは、許せないです。

責任取ってくれますよね?先輩」



聞いたことないくらい、廉くんが怒っている。


思わず背筋がぞくりとした。



「……いや」

「あの…」



「かわいそうな人たちだね。

この子の凄さがわかんないの?

俺は今、確信したけどね。自分の見る目に間違いはなかったって」



嘘でもいい。


同情でもいい。


…嬉しくて。



「今度こいつを傷つけたら、絶対許さない。

殺しますよ、先輩」



…そして、

廉くんは、ほんとに、……怖かった。



先輩たちはもう何も言わなかった。




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