5時からはじまる甘い罠。
しばらく2人は、その体勢のまま無言だった。
「あの…」
「ん?」
そろそろ離して欲しくて顔を上げると、優しい顔で覗き込まれて、パッと俯く。
綺麗な瞳が、あまりにも近すぎて。
艶のある黒髪にも、かすかに触れてしまいそうなくらいで。
頭が沸騰しそうに熱い。
廉くんはそれを、わかっててやってるんだろうか。
「いつも、自分のことではあんなにへたれのくせに。
変なとこで発揮するんだね、栞菜は」
「それは……」
「……嘘。
栞菜は優しいって、知ってるよ、俺」
優しくなんてない……わたし。
あんなに勇気が出たのは廉くんのことだからだよ。
そう思ったのは、胸にしまっておく。
廉くんが、わたしの体を抱きしめる腕に力を込めた。
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