強く生きろ〜紅き誓い〜
「わあ〜、素敵!アオザイの専門店ですって!」

お母さんがそう言い、真田千尋(さなだちひろ)の手を引っ張る。

「ちょっと見ていきましょうよ!」

お父さんにも声をかけ、お母さんは店の中へと千尋とともに入っていった。

アオザイとは、ベトナムの民族服のことだ。ベトナムでは普通に女子高生もアオザイを着て学校へ行くらしい。

店の中には、色鮮やかな光景が広がっている。お母さんはキラキラと目を輝かせながら白いアオザイを買っていた。

千尋は今、家族とベトナムに旅行に来ている。南シナ海に面した東南アジアの国だ。お母さんがアオザイを見てみたいと言ったため、ベトナムを観光している。

カフェやバーが立ち並ぶハノイ旧市街や、フランス植民地時代に避暑地として開発されたダラットを訪れたり、本場の生春巻きやフォー・ボーを食べたりしている。

「海外旅行なんて久しぶりだな〜」

「本当!五年前にグアムに行ったきりよね〜」

お父さんたちは、久しぶりの海外旅行に舞い上がっている。しかし、千尋は二人が見ていない時はいつも辛そうな表情だ。
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