強く生きろ〜紅き誓い〜
ナイフで刺される恐怖を感じながら、千尋は口を開く。

「ここはどこなんですか?どうして私はここにいるのですか?」

「お前、何も知らないのか?」

「私は、どうしてここにいるのかがわかりません。家族とベトナムに旅行に来て、観光をしている時に交通事故に遭って、目を覚ましたらここにいたんです」

「観光?今、この国に観光に来る馬鹿はいないだろう。お前は私が朝起きたら部屋の隅で倒れていた。私たちのテントに侵入したんだ」

「テントって一体何のことですか?」

「陸軍のテントに決まってるだろう!」

女の子は苛立ちながら、軍服につけられた階級章を指差す。その階級章がどの位を示すものか千尋にはわからなかったが、この女の子が軍人であることは間違いなさそうだ。

「陸軍?訓練でもしているんですか?」

「馬鹿か!今は南ベトナムとアメリカと戦争中だ!!」

その女の子の言葉に千尋は固まる。さっきから話がおかしいのはもしかして……。千尋は嘘だと思いたかった。こんなこと、アニメや漫画でしか聞いたことがない。

「……今は何年ですか?」

「1974年だろ」

「ほ、本当ですか?」

「本当だ」
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