俺様社長のプロポーズ?!
…次の日の朝から、社長と顔を合わせることすらなかった。

社長という職業は、当然忙しいだろうし、無理はない。

でも、なんだか拍子抜けしてしまった。

慣れない家での、唯一の救いは、家政婦がいてくれることだった。

「おはようございます、桃子さん」
「おはようございます」

家事全般してくれる上に、私にもとても優しい。

「…あの、社長は?」
「潤様は、早朝会議のため、先に出勤するとのことです。さぁさぁ、桃子さんも朝食を召し上がって下さい」

「ありがとうございます、いただきます」

温かな朝食に心も体も温まる。

全てを食べ終え、皿を下げようとすると、止められた。

「私の仕事ですから、置いておいてください」
「でも、これくらい」

と言いかけて、困った表情をされてしまったので、任せることにした。

「ありがとうございます、お願いします」

その言葉に笑顔になる。

「桃子さん」
「…はい」

「潤様は、一見とても冷たそうに見えますが、とても心の優しい方です。でも、いつも独りなんです。ご両親からも、お兄様からも、見離されて…」

「…」

「桃子さんだけが、潤様の心のよりどころなのだと思います」

「そうでしょうか?」

「桃子さんを迎えるための準備中、本当に、嬉しそうでした。桃子さんがここに来てから、潤様の表情はとても穏やかです」

「…仕事に行ってきます」

「あ、はい。お気をつけて」

私はなんとも言えない顔で、その場を後にした。
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