妖狐の瞳に恋をした
マスターが鬼だと分かってからもう一つビックリしたことがあった。

それは、常連さんの岩井さんも妖だということ、岩井さんは妖狸だった。

知った時には、あまりにもイメージとぴったりで笑ってしまった。

こんな身近に妖の人が何人もいたなんて・・・。

後、変わったことがもう一つ、デュパンに新たな常連さんができた。

それは、紫黒(シコク)さん。

昔から懐いていた憧れの叔父さんのマスターに会いによく来店する

ようになった。

妖の世界から姿を消したマスターをずっと探していたようで、今回

翡翠が紫黒さんに居場所を教えたようだ。

「瑠璃ちゃんは、妖狐になったことに後悔はないの?」

デュパンのカウンターにいた紫黒さんにふと思い出したように聞かれた。

「はい、後悔はないですよ。かえって、こうなって良かったと

 思っています。」

「そんなものなのか?」

「そんなものですよ」

紫黒さんは、まだ好きになった人がいないと言っていた。

だから、翡翠と私が羨ましいとも言っていた。

いつか、紫黒さんにも本気で好きになれる人が表れるといいなと思う。
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