妖狐の瞳に恋をした
実習当日、私と若葉さんは施設の前で待ち合わせをして中に

入った。一通り施設の説明を受けて、今日は見学がメインで

食事の介助と入浴の介助に少し入るらしい。

職員の皆さんはテキパキと仕事をこなしていく。

痴呆の進んでいる人や手足の不自由な人、様々な人がいて

そんな人たちに絶えず優しく声を掛けて笑顔で対応していて

仕事とはいえ、凄いなと尊敬の眼差しで見てしまった。

私なんて、多分顔引き攣っている気がする。

教科書や頭で考えていたより、実際の現場は衝撃的だった。

「笠井さん、こっちの食事の介助をお願い」

「はい!」

「笠井です。よろしくお願いします」

スプーンを使って、口の側にゆっくり持っていく

「笠井さん、口の中までちゃんと入れてあげてね」

「あ、はい」

今度はスプーンを口の中に入れていくとぱくっと食べてくれた

「そう、その調子よ」

「はい」

食事の介助がこんなに疲れるものだとは思わなかった

でも、自分の介助でご飯を食べてくれた姿に嬉しさも感じる
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