妖狐の瞳に恋をした
目を開けると、あの鳥居の所にいた。

「瑠璃様、こちらです。」

促されるまま鴇くんの後をついていく。早く翡翠の顔が見たい。

翡翠の部屋の前に着き、襖を開けると布団に青白い顔で横になる

翡翠の姿が見えた。

「う、嘘・・・、なんでこんな事に・・」

涙を流す私に鴇くんが、私がいなくなってからのことを話してくれた。

「瑠璃様が元の世界に帰られてからの翡翠様は、私達の前では変わり

 ないように見せていましたが、夜も眠れないようで、食事にも

 あまり手をつけない状態でした。

 実は、時々人間界に行き、陰ながら瑠璃様の様子を見守っていた

 ようです。人間界から戻った時は、食事も睡眠もとれていたん

 ですが・・・。

 ここ最近、翡翠様を疎ましく思っている牛鬼という妖がこの妖狐の

 里に悪さをしていて、その処理に追われて人間界に行く時間がなく

 寝られなかったようで、そんな中、牛鬼に襲われてケガをしてしまい

 ました。」
< 81 / 144 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop