意地悪な幼馴染は逃げた初恋を追いかける。
第1章
幼馴染を好きになるって、この世で最も不毛なこと。
特にそれが、意地悪で腹の読めない、タチの悪い男だったりしたら。
「…あ。
ほのかじゃん。おはよ」
マンションの部屋を出たところで、生まれた時から知っている声が聞こえた。
一瞬で誰だか理解した私は、緊張のあまり固まる。
偶然にも部屋を出たのは同じタイミング。
このままではエントランスホールに至るまでの間、狭いマンションの通路に2人きりになる。
………最悪だ。
こんな近さで無視するわけにはいかないじゃないか。
「……おはよう」
仕方なく儀礼的に挨拶を返した。
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