意地悪な幼馴染は逃げた初恋を追いかける。
どういう関係だよ、と詰め寄る彼に、颯は、
「ただのバスケ部のマネ」
と答えた。
「そう!
部長命令でふざけて推薦書類おくったら、本当に通っちゃって。
学校中にバンバン、顔写真とか貼られてましたよね。
私も私で、推薦のスピーチとか、本番みんなの前でしなきゃですし」
焦ったんですよ、と明るく笑う彼女は、美人なのに屈託がなく、嫌味のない人だった。
……少しだけ、胸が灼けるようにチリ、と疼くのには、見ないふりをする。
「いや、颯を推薦したら、そりゃ予選通るに決まってるでしょ」
「まあ、そうですよね。
私、何にも考えないで推薦しちゃって!」
「本当、困るよね。
お前にも先輩たちにも」
そういって笑う颯は、紛れもなく私の知らない人だった。
もう、私なんかの知らない世界をたくさん持って、そこに生きている男子高校生。