意地悪な幼馴染は逃げた初恋を追いかける。


どういう関係だよ、と詰め寄る彼に、颯は、


「ただのバスケ部のマネ」


と答えた。


「そう!

部長命令でふざけて推薦書類おくったら、本当に通っちゃって。

学校中にバンバン、顔写真とか貼られてましたよね。

私も私で、推薦のスピーチとか、本番みんなの前でしなきゃですし」


焦ったんですよ、と明るく笑う彼女は、美人なのに屈託がなく、嫌味のない人だった。

……少しだけ、胸が灼けるようにチリ、と疼くのには、見ないふりをする。


「いや、颯を推薦したら、そりゃ予選通るに決まってるでしょ」


「まあ、そうですよね。

私、何にも考えないで推薦しちゃって!」


「本当、困るよね。

お前にも先輩たちにも」


そういって笑う颯は、紛れもなく私の知らない人だった。

もう、私なんかの知らない世界をたくさん持って、そこに生きている男子高校生。

< 44 / 57 >

この作品をシェア

pagetop