real feel
「……正直に、言った方がいいのか?」

ど、どうしよう。
あんな夢を見てしまったせいか、気になって気になって……。
だけどいざ聞こうとすると今度は不安が押し寄せてくる。

もしあの夢が正夢だったとしたら?
聞きたくはないけど、このままだと疑心暗鬼で主任を信じられなくなってしまいそう。
それに、高柳さんからまた吹聴される可能性もあるんだし。
ちゃんと主任の口から語られる真実を受け止めよう。

「主任の言う事しか信じませんから、私。だから真実をそのまま話してもらえますか?」

悪戯な指がゆっくりと私の中から引き抜かれた。
私のお腹の前で交差している腕が優しく私の身体を包んでくれる。

「分かった。高柳と付き合ってた当時ももちろん"密会スポット"って言われてたよ、あの資料室。俺もアイツと一緒に居た事もある、あの場所に」

え……やっぱり、そう、だったんだ。

ドキドキしてきた。

心臓の音が主任にも伝わってしまうんじゃないかと思うと、更に加速していくような気がして、泣きたくなってしまう。

「あの時は高柳から頼まれて、一緒にある資料を探すために資料室に行ったんだ。資料は割とすぐに見つかったから、さっさと出ようとしたら引き止められて……」

うう……。
やっぱり、聞かなきゃよかった!!
ぎゅっと目を瞑った。

「誘われたんだ『どうせ2人で資料室にいるってすぐばれるんだから』ってな。『冗談じゃねえ』って断ってすぐ立ち去ったけど」

……え?

「断った!!……んですか?主任」

「ああ、嘘も偽りもないって誓えるけど。……なんでそんな疑いの眼差しなんだ」

つい振り返って、主任の目をまじまじと見つめてしまった。
その目はしっかりと私の目を見つめ返してくれていて、真剣さが窺えた。
嘘なんか吐いていない。
主任はいつだって私に真剣に向き合ってくれるもの。

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