real feel
『お前の代わりは誰にも出来ない』

佐伯主任から、そう言われているみたいだった。
そんなこと言われて嬉しくないわけがない。
顔の筋肉が弛み始めるのを感じるけど、私の目の前には、不機嫌顔で私を睨んでいる高柳さん。

いけない。
これ以上機嫌を悪くさせてしまったら、大変なことになりそうだよね。

「蘭さん、食べ終わった?ちょっと広報にさっき忘れ物したから取りに行く。残務処理の続きは、歩きながら話そう。じゃ、すみませんけどお先に」

そう言ってそそくさと席を立つ主任。

「はい、了解です。では課長、高柳さん、お先です!」

遅れないように主任に着いていく。

「広報に何を忘れたんです?主任」

「あれ、嘘だけど」

「じゃ、残務処理は……?」

「そんなもん、あるわけあるか」

あ、やっぱりね。
そうだと思った。

「どうして私を呼んだんですか。私、必要でした?」

「当たり前だろ。お前は平気なのか?俺が高柳と2人でランチしてても。本当はいつものように課長と2人の予定だったんだ……。誤解するなよ、まひろ」

思わず周りをキョロキョロと見回した。
会社内で初めて『まひろ』と呼ばれ、心拍数が上がる。

「誰もいねーよ。もう同じ部署じゃないんだし、2人きりの時くらい……いいだろ」

「……はい、もちろんです主任」

「……………ま、いいか」

何か言いたげだった主任だけど、広報まで私を送って教事1課へと戻っていった。

~~♪

主任からのメール……。

『今日は夕方に社外で打ち合わせだから直帰予定。シフト入ってるんだろ?和食の気分だからよろしく。行く前に電話する』

さっき別れたばかりなのに、また直ぐに会いたくなる。

にやけそうな顔をキリッと引き締めて、午後からの業務へと気持ちを切り替える私。

和食かぁ。
定時で上がれるように仕事頑張らなきゃと、と気合いを入れながらPCに向かい合った。

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