real feel
ちょっと待ってよ、そういうシーンって普通はプロポーズとかの後なんじゃないの!?
プロポーズされた覚えもないのに、話がトントン拍子に進んでいくなんて。

「ちょっと待ってくれないか?反対なんて無粋な真似はしないが、その前に……」

お父さん……。
そうでしょ、やっぱり順番って大事よね。

「佐伯くんとまひろの結婚については賛成だ。しかし順番がな。私もけじめをつけたいと思っているんだ。……まひろ」

「はっ、はい!」

急に私の方を向いて呼びかけられたから、驚いてしまった。
けじめって……?

「私の事をまだ父親だと思ってくれているか?正直に聞かせて欲しい」

お父さんはお母さんと離婚してからもずっと私たち家族の事を気にかけていてくれたんだよね。
私は反発して意地を張って、そのことから目を背け続けてきたけれど。
父親としての責任を果たしてくれてたってこと、今ならちゃんと認める事ができる。

「お父さん……って呼ぶのも久し振りだよね。私が子供だったから分からなかった事も、だんだん分かるようになったと思うの。これから先、もっともっと分かりあえるようになれたらいいなって思ってます、家族として。お父さんは今までもこれからも私の『父親』でいてください」

「まひろ……ありがとう。そう言ってくれると信じていたよ。それじゃ、まひろも賛成してくれるよな」

「ん?私が賛成するって……なにが?」

「私たち夫婦の再婚」

……再婚?
お父さんとお母さんが、再婚だって。
順番って、そういうことですか。

心配そうに私を見守っているお父さんとお母さんと、主任。
そんな深刻な顔しないでよ。

「じゃあ、順番だから……両親が再婚してからでないと結婚できませんね、主任」

私のひと言で場の雰囲気が和んだのを感じた。
みんなに笑顔が戻って、私もみんなにつられたのか自然と頬が緩んだ。

「ありがとう、まひろ。あーこれで肩の荷が下りたわ。長い間心配かけてごめんね、まひろ。もう大丈夫だから、あなたもこれからは自分の幸せを考えてね」

お母さん……。
10年間離婚していても、お父さんが再婚しても、ずっと信じていたのかな。
またいつか、一緒になれると。
私には真似できないかも。
愛情って、人によって形が様々だから"これが正解"なんて決まってないんだろうけど。
私は私なりの、精一杯の愛情で主任を包んであげたい。

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