real feel
「蘭さまにも結婚を約束されたお相手がいらっしゃるとのことで、新郎新婦のお二人から是非ともプレゼントしたいとのことです。次に幸せになるのは貴女……という気持ちを込めて幸せがいっぱい詰まったブーケを受け取っていただきましょう!」

会場から拍手喝采が沸き起こり、有田さんからブーケを受け取ったまひろは感極まったのか、涙で目をうるうるさせている。

「おいおい!蘭さん相手がいるらしいぞ!」

「なんだよ、売約済みときたか。だからあんなに綺麗になったんじゃないか?」

「それにしても、蘭さんの男って誰だよ!?シャイニングの社員なのか?教事1課にいたときには分からなかったよな」

俺だよ、文句あるのか!?
分かるはずもない。
仕事中はいつもポーカーフェイスだもんな。
俺も、まひろも。

広報でもきっとそうなんだろう。
部署が離れてから俺のストレスは溜まる一方だ。

「さっきのスピーチも会場を巻き込んで盛り上げて。計算じゃなくアドリブって感じで良かったよな!」

「広報で更に経験を積んでキャリアアップしてるってことだろ。そう思いませんか?佐伯主任」

「ああ……そうかも知れないな」

あくまで無関心を装って素っ気なく答えたが、同席ではしゃいでた連中はなんだか気まずそうに黙ってしまった。

「それでは新婦の菜津美様はお色直しのため一時中座させていただきます。いまブーケを受け取られました新婦のご友人、蘭様にエスコートしていただくことにしたいと思います!皆様どうぞ盛大な拍手でお見送りください!!」

これもきっとサプライズなんだろう。
ビックリして慌てるまひろと、逃がさないようにしっかり腕を組んで笑いかけている有田さん。
イチにぃは壇上でしてやったりな笑顔を浮かべ、2人を見守っている。

なんかいいな、こういう温かい空気に包まれた披露宴って。
俺たちもいつかは……。


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