real feel
「ふーん。それで菜津美は主任の車の助手席に…。主任も何も言ってくれないし、見たときには心臓が止まりそうだったのよ私」

「嘘っ!?まさか、まひろ」
「まひろさん、見たの!?」

2人同時に驚きの声をあげた。
そっか、美生さんも私が決定的瞬間を目撃することまでは計算できてなかったのね。
「うん、偶然見ちゃった。その何日か後には主任の車の助手席で、足元に落ちてたマスコットを見つけたの。ああやっぱり見間違いじゃなかったんだなって……ショックだった」

思い出すと、いまでもまだ少し胸が痛む。
悩んで食欲落ちたし、主任からもダイエット禁止って言われたっけ。

私たち……というか、私だけ?
シュウにぃと美生さんのS作戦に思いっきりハマっていたんだ。

「そうだったのね。だけど修一さんの思い通りにはならなかった」

「だって、イチにぃは菜津美にプロポーズするつもりでいたのよ。私だって、主任しか見てなかったんだもの。ごめんね、美生さん」

返事をする代わりに、ゆっくりと首を横に振る美生さん。
あの時は主任と菜津美が一緒にいると聞いて、居ても立ってもいられなくなった。
私の素直な気持ちを、主任に伝えないといけないって逸る気持ちを抑えられなくなって……。
考えてみたら、あの一連の出来事があったから私も主任も素直になれたのかも知れない。

「菜津美さんもまひろさんも、これからまた距離が離れてしまうけど、連絡してもいい?仲良くしてもらえたら嬉しい」

そんなの、こっちからお願いしたいくらい。

「もちろん!シュウにぃとは連絡取らなくても、美生さんにはメールも電話もするね」

「私も!女同士だもの。仲良くしましょ」

3人で声をあげて笑い合った。



食事会が済んで、みんなそれぞれに解散した後。
私は主任の車に乗っている。

「主任、今日はお酒飲めなかったですね」

車で来たからって、断っていたもんね。

一伯父さんと道子伯母さん、イチにぃと菜津美はタクシーで帰宅。
シュウにぃたちは美生さんの運転する車で。
うちの家族は父の車で帰った。
父は、母との離婚したときに禁酒して以来ずっとお酒は飲んでいないそうだ。

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