real feel
「……祥平、ちょっと母さん頭痛が始まったわ。またいつものやつよ。今回のはキツめな感じがするから、いつもより長めに休ませてもらうわね。サチさんごめんなさいね……」

こめかみを押さえながら弱々しく言い残すと、奥の部屋に消えていった。

「はあ~、やっぱりまた言えなかった。ごめんなサチ、今日こそはと思っていたのに……」

ふーん。
やっぱりそうか。

「なあ祥平。『いつもの』って言ってたけど、母さんはしょっちゅうあんな頭痛を抱えてるのか?」

「母さんの頭痛はずっと昔からだよ。自分勝手で我儘な所があるけど、実は繊細な部分もあるんだ。頭痛は精神的なストレスからくることが多いみたいだよ。今日は朝から機嫌が良かったんだけどな……」

奥に引っ込まれてしまっては、話し合いも何もないだろう。
また仕切り直しか?
今日で片を付けるつもりで来たというのに、参ったな。

「ごめん兄さん。わざわざ時間作って来てくれたのに。でもいい機会だし兄さんには話しておくよ。サチはずっと昔から俺と付き合っているんだ。なあサチ、そうだよな?」

「はい。伯母さまが私をお兄さんの相手にって考えていたなんて知らなくて……。気分を悪くされましたよね。すみません」

ほらやっぱり。
俺の睨んだ通りだった。

「謝る必要はない。さっきのお前らの態度で2人が恋人同士ってことはすぐ分かったよ。母さんには秘密で付き合ってるのか?」

母さんが言ってた『いとこ同士だからダメ』って言葉、引っかかるな。
俺だってサッチンとはいとこ同士じゃないか。

「母さんには秘密だよ。俺が高1でサチが中3の時から付き合いだしたんだけど、バレないように付き合うって結構大変なんだ。学生の時は周りの目を気にしてあんまりデートらしいデートもできなかったし。本当にサチには寂しい思いもさせてきたと思ってる」

祥平も同じ様な思いを抱えながら、付き合っていたんだろうな。

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