real feel
結局メールできず、直接お店に向かう事に。
急いで行ったのにイチにぃが先に来て待っていた。

「まひろ、人を呼びつけておいて待たせるとは。俺一応『課長』なんだけど」

「なに言ってるの?呼びつけたのはイチにぃの方じゃない!頑張って仕事片付けてきたのに……」

「え?」

「え?」

…………どういうこと?

「これはもしかしたら"K作戦"の一環なのかも知れないな」

「"K作戦"って、もしかして……こ」

「おい!こんなとこで不用意に言うんじゃねーよ。誰が聞いてるか分からないんだぞ」

あ、そうか。
危うく小久保課長の名前を出すところだった。

「ごめんイチにぃ。でも、よく考えたらこうして2人で会社の外で会ってるのって……まずくない?」

「まあそうだな。しかしこれが"K作戦"だとしたら、あくまでも"相手のフィールドで"が鉄則だからな。とりあえず相手の策にかかってる振りを通さないとな」

せっかくイチにぃと2人きりになったんだし、あの事を聞いてみようか。
みんなで集まったときは、イチにぃと2人で話すなんてできなかったし。
部署も離れた今、こんなチャンス2度とは来ないかも知れないし。

「ねえイチにぃ。聞きたいことがあるんだけど」

「ん、なんだ?愛の告白ならノーサンキューだけど」

もう!真面目な話なのに!!
冗談でも愛の告白なんてやめてよ。
笑えないから。

「ほら、前に私が小久保課長と資料室にいたことがあったでしょ。あの時に聞かされたの。私の部署異動は1年延期されたんだって。イチにぃが私を教事1課から出すのを拒否したって……本当?」

イチにぃは黙って私をじっと見つめている。
さっき冗談を言ったときのような笑顔ではなく、真顔で。

「だからか、小久保が俺とまひろの関係を勘繰っているのは……」

「そうみたい。高柳さんと付き合っていたのに、高柳さんの友達と結婚した自分と宮本課長は似ているって」

「あんな奴と似てるだなんて、冗談じゃねえ」

苦虫を噛み潰したように、吐き捨てるイチにぃ。
小久保課長とイチにぃには、私が知らない確執があるのかも知れないと感じた。

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