real feel
「……いつから気付いてた?俺がここにいるって確信してたってことは、スパイでも送り込んでたのか。いつだってお前は目障りな奴だったよ、宮本」

観念したのか、溜息を吐いた小久保。
お前が俺を毛嫌いしてるって事くらい知ってたさ。

「常務からの指示だったんだろう。ラーセクの今までの実績データを盗み出せって。盗んだ後はデータ改ざんってとこか?」

どこまで手を着けていたんだ。
改ざんまで手が回っていたとしても、痛くも痒くもないが。

「あまりにも上手くいきすぎてる感じはあったけど。常務の暴走を誰も止められなくなってた。自信過剰は危険だと然り気無く忠告しても効き目もなく、自分の天下を疑ってなかったからな」

その暴走に周りの人間が気付かないとでも思っていたのか。
まったくおめでたいな、常務。

「どうするんだ小久保。いくら未遂に終わったといえ、何事もなかったという訳にいかないぞ。常務もこれで完全に終わりだ」

「もちろんタダで済むなんて思っちゃいない。心の何処かでこうなることも予測できてた。もちろん、そうならないように最善を尽くしたつもりではいるが。こうなった以上、もう常務に尽くすつもりはない。潔くシャイニングを出て行くさ」

「なあ、小久保。おれはまだ何も見ていないぜ。お前がデータを盗んだっていう証拠も、改ざんの事実も、まだこの手に掴んではいない。常務は今頃社長や他の役員から引導を渡されているだろうが、お前にはまだ道が残されているんじゃないか?シャイニングを出て行かずに済む選択肢が……」

俺は、何を言い出すんだ。
小久保がシャイニングを辞めるっていうのなら止める義理はないだろう。
どうせ俺は嫌われているんだし。
居なくなってくれれば好都合のはずじゃないか。
なぜ今更、引き止めるようなことを……。

「はっ。同情ならまっぴら御免だ。情けをかけているつもりかもしれないが、そんなことされて俺が喜ぶとでも?最低限のプライドは持ち合わせているんだぜ、宮本課長さんよ」

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