real feel
それもそうか。
確かにプライドが許さないだろうな。

「シャイニングを辞めてどうするつもりなんだ。いろいろと大変だろう?奥さんの事とか……」

「あんたも大概お人好しだな。俺がどうなろうと関係ないだろ。まあ、置き土産代わりに教えといてやるよ。友達が起業するからって誘われていたんだ。シャイニングに居ればある程度の地位は約束されているはずだったし、ここでトップまで上り詰めたいという野望もあった」

ああ、知ってたさ。
常務に気に入られてから、怖いもの無しだったからな。

「だけど正直迷ってた。俺の人生について真剣に考えたよ。新しく起業するって友達が生き生きと夢を語る様子が眩しく見えて、自分の野望ってやつが急に色褪せて見えた。……散々悩んで、悪足掻きもしての結果がコレだ。もう迷わない。シャイニングを辞めて、友達の夢に俺もかけてみようと決めた」

ミッションに失敗したとは思えない、清々しさを見せる小久保がほんのちょっとだけ……格好良く見えた。

「俺のことばかり気にしてるようだけど、あんたはどうするつもりなんだ?蘭さんとの事」

…………は?
何言ってるんだ、コイツ。

「自分の気持ちに素直になった方がいいんじゃないか?俺が言っても全然説得力ないだろうけど。蘭さん、いくら俺がカマかけようと、頑なに『彼氏はいません』で通してたよ。本音を隠してさ、見ていて痛々しいと思えてならなかったよ。そんなに我慢をさせたまんまでいいのか?男だったら最後にはきっちり責任取るべきじゃないのか」

マジで、俺とまひろのこと誤解してるらしいな。
もうそろそろ誤解をといても良い頃だけど……。
コイツには本当のことを教えるのが癪な気もするし。
なにより、話せば長くなってしまう。

面倒だしな……誤解させたままで別にいいか。
どうせシャイニングを辞めるって言ってるんだし、問題ないだろ。

「まひろにはいろいろ我慢させて悪いと思ってるよ。だけど俺は、菜津美のことを愛しているから。離婚してまひろと一緒になるなんて、無理な話だ」

まひろにとって俺は、ただの従兄でしかないからな。
今も昔も……。

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