real feel
「この会社のデータでしたら多分……」
以前に私が扱ったことがある会社のデータばかりがメモに書かれてある。
それだけ木原課長と私は仕事上で関わりが多かったということ。
記憶を頼りに次々とデータを探し出していく。
「……これが最後ですね。意外と早く済みましたね。良かったです」
「そうか、これで全部なんだ。さすが蘭さんは仕事が早いな!助かったよありがとう」
気が付いたら資料室の奥の方まで入り込んでしまっていた。
この資料室は奥行きがある構造になっているため、入り口がずいぶん遠くに感じてしまう。
だからなのかな?"密会スポット"なんていかがわしい場所として社員たちから認識されているのは。
ふと、以前の嫌な夢を思い出してしまった。
翔真と高柳さんがこの場所で、2人きりで……。
ダメよ!あれは私が心配するあまりに見てしまった悪夢。
気にする必要なんてないんだから!!
「……俺は、もしかしたら道を誤ったのかもしれないな」
探し物も済んで資料室を出ようと歩き始めた私を、引き留めたのは木原課長の吐き捨てるような呟きだった。
思わず足を止めて、課長の方を振り返った。
「どういう意味、ですか?『誤ったのかも』なんて。何かあったんですか、木原課長」
課長は私の方を見ていたけど、直ぐには答えなかった。
しばしの沈黙の後、口を開いた課長からは想像もしていなかった言葉が発せられた。
「美里とはもうダメかもしれない。俺たちもう半年くらい前から別居しているんだ」
え……そんな。
美里先輩、仕事を辞めたって聞いていたけど。
きっと木原課長と幸せに暮らしているんだろうとばかり思っていた。
「美里先輩は今どちらに?アメリカですか?」
「いいや、もうとっくに日本に帰って来ているはずだよ。ホームシックだったから、日本での生活が恋しくなってしまったんだよ」
アメリカでの生活が、上手く行かなかったんだろうか?
以前に私が扱ったことがある会社のデータばかりがメモに書かれてある。
それだけ木原課長と私は仕事上で関わりが多かったということ。
記憶を頼りに次々とデータを探し出していく。
「……これが最後ですね。意外と早く済みましたね。良かったです」
「そうか、これで全部なんだ。さすが蘭さんは仕事が早いな!助かったよありがとう」
気が付いたら資料室の奥の方まで入り込んでしまっていた。
この資料室は奥行きがある構造になっているため、入り口がずいぶん遠くに感じてしまう。
だからなのかな?"密会スポット"なんていかがわしい場所として社員たちから認識されているのは。
ふと、以前の嫌な夢を思い出してしまった。
翔真と高柳さんがこの場所で、2人きりで……。
ダメよ!あれは私が心配するあまりに見てしまった悪夢。
気にする必要なんてないんだから!!
「……俺は、もしかしたら道を誤ったのかもしれないな」
探し物も済んで資料室を出ようと歩き始めた私を、引き留めたのは木原課長の吐き捨てるような呟きだった。
思わず足を止めて、課長の方を振り返った。
「どういう意味、ですか?『誤ったのかも』なんて。何かあったんですか、木原課長」
課長は私の方を見ていたけど、直ぐには答えなかった。
しばしの沈黙の後、口を開いた課長からは想像もしていなかった言葉が発せられた。
「美里とはもうダメかもしれない。俺たちもう半年くらい前から別居しているんだ」
え……そんな。
美里先輩、仕事を辞めたって聞いていたけど。
きっと木原課長と幸せに暮らしているんだろうとばかり思っていた。
「美里先輩は今どちらに?アメリカですか?」
「いいや、もうとっくに日本に帰って来ているはずだよ。ホームシックだったから、日本での生活が恋しくなってしまったんだよ」
アメリカでの生活が、上手く行かなかったんだろうか?