real feel
「渡米前に入籍だけはしたんだけど、結局バタバタしてたから式も披露宴もできなかったんだ。その事も今思えば不満に思ってたのかもしれないな。こうして離れてみればいろいろと思い当たることもあるけど、ケンカやすれ違いを繰り返すうちに取り返しがつかないところまで来てしまった……」

木原課長も美里先輩も、きっと幸せでいるんだろうと思っていたのに。
私と翔真も、いつか解り合えなくなったりするんだろうか?

まさか!そんなはずはない。
イチにぃと菜津美だって、お互いを想い合っているじゃない。
私とイチにぃの怪文書騒ぎでもビクともしなかったんだから。
たまにはケンカすることもあるかもしれないけど、心の深いところで繋がり合っていれば大丈夫だよね。

「あの時のこと、後悔しているんだ。歓送迎会でのことだよ。ああいう形で蘭さんのことを傷つけてしまって、本当に申し訳なかった。バチが当たったのかもしれないな」

バチが当たった……?

ああ、確かにあの時はキツかった。
歓送迎会の時、私はボロボロだったもの。

「もう忘れましたから。課長もそんなこと気にせず、今は美里先輩とのことを……」

「俺、蘭さんのことを部下としてもだけど、ひとりの女性としても魅力を感じていたんだよ。だからつい構ったり可愛がりすぎてしまったんだと思う。美里はそれをすごく気にしていた。カモフラージュのためだよって無理矢理納得させたけど。美里と蘭さん、どちらにもいい顔をして楽しんでいたんだ。ゲスだよな、俺」

…………嘘でしょ。
今更そんな話を聞かされても。

「会うのは1年数ヶ月振りだけど、蘭さんますます魅力的になったね。自信を持って仕事に取り組んでいる感じだし、それにすごく綺麗になったよ」

「え…………」

どうして、そういうことを言うの?
私はもう木原課長のことなんて、存在すら忘れかけていたのに。
あの過去の淡い恋心だって、本気で好きだったのかどうか思い出せないほどなのに。

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