real feel
「あの頃はそんな蘭さんの魅力に気づかないふりをしていたんだと思う。もっと素直になるべきだったんじゃないかって、悔やんでいるんだよ。今だったらまだ間に合うかな。蘭さんも俺のことを慕ってくれてただろ?今度こそは正しい道を……」

「まっ待って下さい課長!それ以上は言わないで下さい!!」

だめ、これ以上黙って聞いてなんかいられない。
それじゃなに?美里先輩と上手くいかなくなったから私と?

そんな馬鹿なこと、有り得ない。

「確かに私、あの頃は木原課長に恋心を抱いていました。美里先輩とお付き合いされているなんて知らなかったし、ちょっとした勘違いもしてしまっていたと思います。だから自分が惨めになって、ひとりで泣きました」

「そうなのか……。悲しませてしまったんだね、悪い事をしてしまったな。だけどもう泣かせるようなことは……」

今更謝られても、もう遅すぎるし。
それに私にとっては過去のちょっとキツイ思い出にしかすぎない。

「だけどもう、過ぎた事ですよ。あの時はそれなりに傷付きましたけど、それももう忘れてしまいました」

そう、私にとって大事なのは"過去"よりも"現在"なんだから。

「あれから1年以上も経っているんですよ。その間にいろんな出来事があったはずです。課長にも私にも……。課長が美里先輩と結婚して幸せになろうとしたように、私にもそうなりたいって思える人が……います」

木原課長は、私にとっては過去の人。
私が今いちばん大事に想っている人は……。

「……知ってるよ」

え?知ってるって、どうして?
私と翔真の関係は社内で知っている人はごくわずかだし、アメリカから帰国したばかりの木原課長が、どうして……。

「実はちょっと社内で蘭さんのことを噂で聞いたんだ。だけどまさか、あの人とただならぬ関係になっていたとは驚きだったよ。俺の後任の教事1課長、宮本さんなんだろ?蘭さんの好きな奴って」

「え、ちょっ……何でそうなるんですか!」

< 188 / 221 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop