real feel
「もう多分手遅れだよ。美里と別居状態になってから一度も会っていないんだ。アイツの方から連絡もないし。まだ子供が出来てなかったのは幸いだったな。これで別れることになったとしても、綺麗さっぱり他人に戻れるって訳だ」

「いい加減にして下さい!!」

ウジウジとネガティブ発言を繰り返す課長にイライラが募って来て、つい声を荒げてしまった。
私が怒鳴るなんて予想外だったのか、驚いた様子の課長。

「せっかく一時帰国出来たんですから、こんなチャンスを逃す手はありませんよ!!美里先輩に会いに行くべきです。美里先輩も本当は待ってるかもしれないですよ。会ってきちんと話し合わないとダメです。そうでないときっと後悔します」

「美里は俺が帰国してるって事、知らないんだ。それに、会って何をどう話したらいいのか……」

ああもう!
木原課長ってこんな頼りない上司だったかしら。
もっと自信家で堂々としてたと思うんだけど。
こういう弱々しいところに嫌気がさしたんじゃないのかな、美里先輩も。

もう定時過ぎてしまってる……。
携帯で時間を確認すると、17:55。
翔真からの電話もメールも来てない。
今日はノーザンだし、もう退社してしまった?
でもどうして連絡くれないんだろう。
黙ったままの携帯を恨めしくにらんで、またポケットに仕舞った。

「さあ、木原課長。探し物も済んだことだし、早く出ましょう。私今日は大事な用事があるから帰らないと……」

「待ってくれ、蘭さん!!まだ結論が出ていないんだ。俺は、これからどうするべきなんだ?教えてくれよ……」

は?何を言っているの!?
私の話を聞いていなかったの?

「課長、夫婦の問題は夫婦で話し合って解決するべきです。美里先輩に会いに行けばいいと思います。善は急げですよ!さあ行きましょう」

埒が明かないから、とにかくココを出ることが先決。
さっさと入り口のドアへと向かおうとする私の腕を掴み、引き留めようとする課長。

「ちょっと……待ってくれ!」

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