real feel
「俺たち、結婚するまではケンカもしたことがなかったし、ずっといい関係でいられると思っていたんだ。だからまさかこんな風になるなんて。だから、どうしたら元に戻れるのか分からないんだ。なあ、俺は美里に会ってどうしたらいいんだ?」

そんなこと、私に聞かれても。
私どうして木原課長と美里先輩のプライベートな問題に巻き込まれてしまったんだろう?
だけどこのままじゃ、とても資料室から出られそうにない。

「そうですね……。こういう問題って複雑になればなるほど元に戻りにくいですよね。大事なことはお互いが相手のことをどれだけ必要としているか、ではないでしょうか?だから課長も難しく考えないで、シンプルに美里先輩に素直な気持ちをぶつけたらいいと思いますよ。お互いが好きで結婚した2人なんですから、簡単に別れようなんて思わないでくださいよ」

「蘭さんって、結構冷めてて他人にはあまり関心がないって思っていたんだけど。意外とホットで人間味に溢れた女性だったんだね」

…………ホット?
この、私が?
人間味溢れる、ですって!?

"愛想なし笑顔なし容赦なし"なんて翔真が言ってたけど、会社ではクールで通っている私なのに。

課長から掴まれてしまった腕を振り払うことも出来ずにいる私。
本当は今すぐにこの場から立ち去って、翔真に会いに行きたいのに……。

放っておけないのは、あの頃のようなママゴトみたいな恋じゃない本当の愛情というものを知ったから、かもしれない。
木原課長と美里先輩がこのまま別れてしまったりしたら、私の失恋だって無意味なものになってしまうような気がするし。
今の私は、自分さえ幸せだったらいいなんて思えなくなってる。

「課長、美里先輩のことを大事にしてあげてください。美里先輩、課長に話したいことや聞いてほしいことがたくさんあるはずですよ。そういう気持ちを全部受け止めてあげてください。その上で、課長の想いを伝えてあげたらきっと、美里先輩も……」

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