real feel
第12話

返事は『YES』か『はい』で

「美味かったな、お好み焼き」

「うん。でも吉田先生が作ってくれた方がもっと美味しかったかも」

会社を出て、私の希望によりお好み焼きを食べに行った。
今日は翔真の誕生日ということで私の奢りだったんだけど……。
いつもよりも食べる量が少なかったような気がする。
私の奢りだから遠慮してたのかな。

「翔真、お腹は満たされた?遠慮して加減したんじゃないの」

「そんなことないけど」

「そうかな。いつもはもっと食べるじゃない。それに……」

私たちがいま居る場所は、私が住んでいるマンションの隣の公園。ベンチに並んで座り、まったりとコーヒーとカフェオレを飲みながら歓談中。

「それに、なんだ?」

私が言おうか言うまいか迷って途切れさせた言葉の先を促された。

「何て言えばいいのかな。いつもよりも口数が少なかったような気がしたんだけど。もしかして具合でも悪いとか、なにか心配なことでもあるんじゃ……」

そう、いつもとちょっと雰囲気が違ったような気がしたんだけど。

「そういえばここで2人で話をするのは久し振りだな」

「うん……そうだね。あの時以来」

はぐらかされた?
急な話題転換で、ついポロッと『あの時』なんて言ってしまった。
それはもちろん、翔真と2回目のキスを交わした『あの時』だ。

最初のキスは突然奪われた事故みたいなものだったから、私にとっては2回目のキスの方が思い出深い。
ファーストキスから2ヶ月経ったあの日のキスで記憶を取り戻してくれたんだもの

「俺がまひろに堕とされていたと自覚したのが『あの時』だった。だから今日はどうしてもこの場所で話したかった」

夏真っ盛りで昼間の熱気の名残が感じられるけど、さすがに夜には暑さも和らいでいる。
冷房の効いた会社やお店にいたから今はこの温もった空気が妙に心地よい。

1年前のBBQの日の出来事を思い出した。

あの日、初めてお互いの気持ちを言葉にして伝え合った私たち。
あれから1年……。

「なあ、今の俺たちの関係を言ってみて」

< 204 / 221 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop