real feel

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──10月2日。

「残念だわ、本当に。私これでも結構本気だったのよ。どうしてこう思い通りに事が運ばないのかしらね、世の中って」

「上村課長……。そんなにあからさまに落ち込むのやめて下さいよ。私がもっと課長のお役に立てるように頑張りますから!」

「蘭さん、貴女には分かってもらえないわ私の気持ちなんて。どうせ貴女だって私を置いて行っちゃうんだから」

「私が課長を置いて行くだなんて……」

「ああごめんなさい。なんでもないわ独り言だから気にしないで。ほら迫田くん!真面目にやりなさいよ!!」

「俺のどこが不真面目だっていうんですか!八つ当たりはやめて下さいよー」

例の"K作戦"が収束してから約2ヶ月が経過した。
会社の機密事項を不正に盗み出し、改ざんまで企んでいた黒幕は常務。
その常務は野望を絶たれ退任せざるを得なくなった。
社長の温情により解雇ではなく、自主退職という形になったらしい。

そして常務の計画に加担し、手先となって動いていた小久保課長。
彼は計画の実行を宮本課長に阻まれ、野望が潰えた事を知った。

それでもまだ"未遂"だとしてこの会社に残る道を探ろうとしたのは宮本課長。
イチにぃは小久保課長のことを毛嫌いしてると思っていたけれど。
仕事に関しては認めていた部分もあったのかな。
結局そんな宮本課長の配慮も意味がなかった。
小久保課長はあっさりと退職の道を選んだというのだから。
最後には清々しい表情を見せていたっていうから、ある意味覚悟はできていたんだろうなと思った。

他にも何人か常務派の社員がなんらかの関与を認めたらしい。
降格や謹慎、減給などの処分が下されたものの、解雇までには至らなかったという。

常務派に潜入していた総務部長が余計な退職者を出さずに済むように陰でいろいろと動いていたと宮本課長から聞いた。
しかし"K作戦"が収束したとは言ってもその余波は大きく、この2ヶ月は社内がバタバタと落ち着かなかった。

退職したのは常務と小久保課長だけではない。
高柳さんも一緒に辞めてしまったのだ。

小久保課長は奥さんと離婚したらしい。
常務との縁をすっぱり断ち切って、新しいことにチャレンジするという課長。

『一からやり直す俺について来てほしい』と誘われたんだって高柳さんが嬉しそうに話していた。

そう、彼女が退職する前に2人で会って話をしたのだ。
前に話をした駅近のカフェで。



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