real feel
高柳さんと会った日は土曜日のお昼時。
翔真と過ごすはずのランチタイムに彼女と会ったことが気に入らなかったらしいけど、その日の夜は翔真の家でお泊まりデートだったからなんとか許してもらったのだ。
高柳さんとのランチ後、夕食の材料をスーパーで選んでいると電話がかかってきた。

『いつものスーパーにいるんだろ?駐車場で待ってるから』

さすがエスパー。
私の行動なんてすっかり把握しているんだから。
スーパーから翔真の家に帰って、早速食事の支度に取りかかろうと思っていたのに。

「とりあえず食材は冷蔵庫に全部入れとくから」

なんて私が返事する前にどんどん冷蔵庫に詰め込まれる食材たち。

「あ、待って!直ぐに使うものは入れなくても……」

「いや、まだしばらく出番来ないし。全部入れとく」

そう言いながら有無を言わさずテキパキと冷蔵庫に収めてしまうと、すかさず私の手を掴んだ翔真。そのまま二階の部屋へと連れ込まれてしまった。

「え、ちょっと翔真?ご飯の支度……んっ……」

部屋に入ってドアを閉めたかと思うと、私の言葉を最後まで聞かずに重ねられた唇。

ど、どうしちゃったの?
私何かまた気付かないうちにやらかしちゃったの?

いくら考えを巡らせても、思い当たる事はないし。
翔真から与えられる唇への愛撫が気持ちいいから、考えるのはもうやめよう。
背伸びをして翔真の首に腕を絡みつかせる。

キスの合間の息継ぎも意識しないで出来てるのは、すっかり慣らされてしまったんだろう。
それでも、唇が解放されたときには心臓がドキドキしすぎて苦しくなってしまったけど。

「食事の支度なら、俺も一緒にやるから。だから今は何も言わず俺に抱かれてくれないか?……ダメ?」

そんな言い方、ズルい。
ダメだなんてそんなわけないじゃない。

だけど『何も言わず』なんて言われたから、言葉ではなく私からのキスで応えた。

『……今すぐ、抱いて』





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