real feel
「は?草食系?」

食事の前にまさかの甘いひとときを過ごし、予定より少し遅くなってしまった夕食。
翔真が手伝うって張り切るから、一緒にハンバーグを作った。

本当は本格的な煮込みハンバーグをじっくり時間かけて作るつもりだったけど、時間短縮のため和風ハンバーグに変更。
大根おろしのソースをたっぷりかけて……。

美味しい食事は会話も弾む、って訳で。
昼間に高柳さんとどんな話をしていたのかについて、尋問されてる。

「なんかね、よく分かんないけど、忠告されちゃった。もっと女を磨いて夢中にさせろって。高柳さんみたいな魔性の女でもがっついて来ないんだから、私みたいな色気のない女じゃ………抱いてもらえないって」

「なんだって!あの野郎、自分勝手に無茶苦茶言いやがって……」

翔真は元々、結婚願望が強かったらしい。
自分が母親と離れて暮らしてきたから、自分の子供にはそんな寂しい思いをさせたくない。
だから結婚への理想は高く、なかなか結婚したいと思える女性に出会うことができなかったようだ。

翔真が自分から告白して付き合ったことはなく、恋愛に関しては受け身だったそうで。
付き合っても相手にのめり込むことはなかったらしい。
それは高柳さんのときも同じだったようだけど。

小久保課長と浮気したのは自分が高柳さんときちんと向き合わなかったからだと反省し、ちゃんとやり直すつもりで『俺だけにしろ』って言ったけど、結局彼女は小久保課長を選んだ。
そもそも翔真とは遊びのつもりだったみたいだし、それで翔真は恋愛不信になったみたい。

「社内恋愛なんて懲りたつもりだったのに。堕ちたのは本能的なものだったのかもな。無自覚ながら俺にとって最高な理想の相手に自ら望んで堕ちたんだよ」

最高な、理想の相手?

「ねぇ翔真、それってもしかして……私のこと!?」

だって、話の流れ的にそう思ってもおかしくないでしょ?
勘違いしたり自惚れたりしたくないけど、そういう認識で合ってる?

「お前こそ無自覚もいいところだな。他に誰がいるんだ」

「あの……。私のどこが?」

私のどのへんが、翔真にとって理想だったの?

「それは、まず一番最初にやられたのは、あどけない……いや、飾らない"笑顔"だ」

「へっ?それって……」

歓送迎会の時に喫煙室での化粧が落ちてしまった後に笑ってしまった、あの時の?

「でもその時のことはすっかり忘れてしまってたけど。出張から帰って来たら突然お前とコンビ組まされて、一週間我慢したら切り捨ててやろうと思ってたのにな。まさか俺のパートナーとして手離せない程の存在になるなんて想像もできなかった」

え!!初耳だよそんなの。

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