real feel
菜津美、幸せそうだな。

「イチにぃはきっと菜津美のことを幸せにしてくれるよ。だから、イチにぃのことも幸せにしてあげて。結婚してもずっと私の親友でいてね、菜津美」

ちょっと驚いたように私を見て固まってたけど、すぐに笑顔が溢れた。

「もちろんだよ!まひろから親友なんて言ってもらえるなんて、幸せ」

「いやいや、菜津美を幸せにできるのは、イチにぃだけだから!」

「いやいやいやいや、まひろにも幸せにしてもらうから!」

「そんなこと言ったら、イチにぃから略奪……」

あ、NGワード。
急にトーンダウンした私を不思議そうに見てる菜津美。

「やっぱり体調のせいだけじゃないのね。佐伯主任とちゃんと話してる?」

「部署が離れてから、すれ違いが続いてるかも……」

多分、それだけじゃない。
あの電話の件があってから、心のどこかで主任のことを拒否してる。
嫌いになったわけじゃない。
だけど……不信感が否めない。

「食欲ないの?もっと食べなきゃダメだよ。今日だって残業するつもりなんでしょ。そんなんじゃまた倒れちゃうよ!」

「……大丈夫だよ。最近不摂生してたから、このくらいでちょうどいいんだってば。あ、もうこんな時間!休んでた分もしっかり働かなきゃね!!」

心配そうな菜津美を振り切って、広報に戻る。
デスクに置いたままだった携帯がメール着信のランプを点滅させていたのに気付いて、確認してみる。

……佐伯主任からだ。

『ちゃんと食べてるか?残業無理すんなよ。今度の土日に部長と出張に行く事になった。また週末会えなくてごめん。今夜電話する』

週末、今度は主任が出張になったんだ。
会えなくなって残念……というより、ホッとしてるなんてね。
ちゃんと話さないといけないってことくらい解ってるけど、なんだか真相を知るのが怖い……。

そして、主任が出張でいない週末に、更なる刺客が私の前に姿を現す事になるなんて。
この時の私には考えも及ばないことだった。

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